LPガス販売店はいつも、ボンベに概ね1カ月分程度のLPガスが残るようお届けしています。つまり、大災害などによりLPガスの配送がストップしても、ガス設備が破損していなければ、普段通り1カ月程度使えるよう備蓄されています。このように備蓄されているガスを「軒下在庫」と呼んでいます。
「LPガスは災害に強い」と言われるのはこのためで、国のエネルギー基本計画でも、「LPガスはエネルギー供給の最後の砦」と位置づけられています。これに対し、都市ガスは導管(配管)が損傷すると、一帯への供給が一斉にストップし、また復旧にも時間がかかります。
このため、東日本大震災での教訓を生かそうと、大災害発生時に避難所や救急施設となる、都市ガス圏内の小中学校や公民館、病院などでは、国の支援を受けて、LPガス設備の導入が進んでいます。横浜市や秦野市など、神奈川県内でも導入が進んでいます。
災害対応では近年、LPガスの備蓄を兼ねて、一般的なボンベ(例えば50kg用)の6~20倍も蓄えられる大型のタンク(バルク貯槽)を設置するケースが目立ってきています。例えば1,000kg用を設置してあれば、LPガスの残量が半分になっていたときでも、約70人分の炊飯に加え、給湯、暖房、ガス発電を行っても、4日分程度は使用できるとの試算があります。
*詳しくは、日本LPガス協会サイト(http://www.j-lpgas.gr.jp/kiki/balk.html)をご覧ください。
都市ガス業界では、供給途絶時に備えて「移動式ガス発生設備」の設置を進めていますが、これにもLPガスが利用されています。
【エネルギー基本計画】
国のエネルギー施策の基本となる「エネルギー基本計画」は、東日本大震災の教訓を踏まえて2014年4月に改定されました(第4次、4月11日閣議決定)。
この中で、LPガスは次のように評価、位置付けがされました。
○評価
- 供給障害に陥った電力や都市ガスを補完したのが、石油とLPガスであった。
○位置付け
- 中東依存度が高く脆弱な供給構造であったが、北米シェール随伴のLPガスの購入などが進んでおり、地政学リスクが小さくなる方向にある。
- 化石燃料の中で温室効果ガスの排出が比較的低く、発電においては、ミドル電源として活用可能である。
- 最終需要者への供給体制と備蓄制度が整備され、可搬性、貯蔵の容易性に利点があることから、平時の国民生活、産業活動を支えるとともに、緊急時にも貢献できる分散型のクリーンなガス体のエネルギー源である。
○政策の方向性
- 災害時には、エネルギー供給の「最後の砦」となるため、備蓄の着実な実施や中核充填所の設備強化などの供給体制の強靭化を進める。
- 同時に、料金透明化のための国の小売価格調査・情報提供や事業者の供給構造の改善を通じてコストを抑制することで、利用形態の多様化を促進する。
- さらに、LPガス自動車など運輸部門においてさらに役割を果たしていく。
○産業基盤の再構築
- 熱電供給により高い省エネルギーを実現するエネファーム等のLPガスコージェネ、ガスヒートポンプ(GHP)等の利用拡大。
- 都市ガス事業や水素燃料供給事業への進出。
- アジアへのLPガス安全機器の輸出。
- タクシーなどはLPガスを主燃料としており、運輸部門での燃料多様化を担うことも期待される。
【東日本大震災では…】(経済産業省・在り方検討会報告書)
東日本大震災は2011年3月11日に発生しました。LPガスが全面復旧したのは4月21日。これに対し、都市ガスは5月3日、電気は6月18日でした。
被災3県における各インフラの供給不能戸数の推移(推計を含む)
出典:経済産業省「東日本大震災を踏まえた今後のLPガス安定供給の在り方に関する調査」(平成24年2月)
【移動式ガス発生設備】
液化天然ガス、圧縮天然ガスまたはプロパンガスをボンベに充填して、スポット的にガスを供給する設備です。 地震が発生した場合等に、病院や老人福祉施設等に都市ガスを臨時供給します。
(東京ガス「ピピッと!ガス百科」より)